巨樹・古木の樹齢
人で言えば年齢は正確に把握されている。100歳を超える人でも生年月日は正確にわかっている。しかし樹木では樹齢の把握は簡単なことではない。森林を管轄する行政の中で森林計画制度というものがあり、森林の年齢が把握されるようになったが、正確に分かるのは第2次世界大戦以後に植栽されたものが中心である。
巨樹、古木で言えばなおさらである。まず、植栽に関する記録がほとんど無いので巨樹・古木の樹齢は把握できない。このため巨樹・古木の樹齢は伝承数百年、推定数百年というものがほとんどである。
植栽の記録がある巨樹・古木としては「萩原の笠松」「連取のマツ」などがある。明治以降になると「妙義のアメリカショウナンボク」や「中之条高校のラクウショウ」などは植栽の経緯が記録されており正確な樹齢を把握することができる。今回紹介する「旧藤岡小学校のケヤキ」や「玉村八幡宮のクスノキ」なども植栽に係る情報が残っており改めて記録することとした。また、「境高校のトウカエデ」や「高島小学校のトウグミ」などの学校に植栽された巨木・古木についてもある程度正確に推定することができる。
ところで「樹木なのだから年輪を測れば樹齢は分かるのでは?」とのご意見があるかもしれない。日本のように四季のある地域では、確かに年輪がはっきりとできる樹木が多い。これは春から夏にできる材の細胞が大きく、秋から冬にできる材の細胞が小さいことからその対比で輪のように見える現象であり、1年に1本できる。樹種にもよるが100年から200年程度の樹齢の樹木については年輪を測ることにより樹齢が分かる可能性が高い。
しかし、生きている樹木について計測することはできない。森林の研究分野で成長錐という器具があり年輪を採取することはできるが、貴重な巨樹、古木に適用することはできないし、巨樹に対しては物理的に使用不能である。さらに巨樹・古木にあっては幹の中心部が腐朽し空洞になっているものがほとんどであり年輪が計測できても正確な樹齢は分からないものも多い。
そんな中で、年輪の計測により樹齢が把握できるものがある。例えば複数の樹木で構成される並木などで、たまたま枯れた樹木の年輪が正確に計測できる場合がある。これにより並木を構成する他の樹木の樹齢が把握できる。「安中原市スギ並木」、「中山三島神社のスギ並木」、「大柏木諏訪神社のスギ並木」などがその例である。
今後、同位体原子の利用や電気抵抗、音波、レーザーなどを使用することで年輪計測が可能になり、樹齢を特定することが期待される。(金澤好一)
(写真は連取のマツの根元にある石碑「享保二年 奉納御寶前 酉九月吉日」と読める。享保2年は(1717年)にあたる:写真と注釈は事務局)