群馬県緑化推進委員会では県民の皆さんに巨樹・古木に親しんでもらうことを目的に「巨樹・古木巡りツアー」を実施したり、それに係る解説書を出版している。今回、これに加えて約50本の巨樹・古木を実地に調査し、冊子として作成した。これは、県内各地にある巨樹・古木を県民の皆さんが認識し、現地に出向いて鑑賞してくださる一助になることを期待している。
実際に巨樹・古木を見るとその大きさに圧倒される。大きいものでは高さが40m以上、幹回りも10m以上になるものもある。私たちが普通に認識できる生物としては最大のものであろう。また、人間の寿命に比べて巨樹・古木の命の長さについて感じることもできる。伝承では千年以上というようなものもあるが、正確に分かっている巨樹・古木の樹齢はせいぜい数百年というところであろう。しかし、その佇まいを見ると、幹がほとんど空洞であっても大きな樹冠を支えている痛々しいまでの立ち姿や魁偉と感じられる樹幹のうねり、複雑な形状、垂れ下がる大枝などに巨樹・古木が生きてきた途方もない長い歴史を実感できる。太古から人々は巨樹・古木の大きさや命の長さに神性を感じ崇めてきたことであろう。私たちもこれを追体験することができる。
巨樹・古木には大きな樹体を支えるために地際に特徴を持つものがある。巨大な根系を地上に這わせるもの、扇型に広がる根系で大地をしっかりとつかんでいるものなど、大きくなるため、生きていくための逞しさを感じることができる。
さらに、巨樹・古木の周りには石碑、石祠や石仏を見ることができるものもある。そこには神仏の名称や年号、奉納者が刻まれているものもあり、人との関わり、歴史を実感することができる。今から数百年前の江戸時代の人々も巨樹・古木に対して神性を感じていたのかと思うと何だかうれしい気持ちにもなる。 一方、今回の調査は巨樹・古木の現況を正確に把握することも目的にしている。樹高、胸高周囲長(形状によっては地際周囲長など)を正確に計測して記録に残すこととした。
この冊子が巨樹・古木に触れ合うきっかけになったり、理解を深めるために役立つことを願ってやまない。
令和3年5月 編著者 金澤好一
(冊子の巻頭言より)
(冊子の巻頭言より)